東日本大震災やそれに伴って起きた原発事故後、保問研は支援活動を通して福島さくら保育園と継続して交流が行われてきました。毎年開かれる全国集会でも、さくら保育園の職員の皆さんが参加され、福島の子どもたちの様子や取り組みを伝えてくださいました。「現地に行って、原発事故の事実と子どもたちを守った保育を学び、福島の人々に心を寄せて忘れない」と、福島で復興支援セミナーの開催を、2年前から準備を始めてきました。
10月29日30日に 北海道、仙台、東京保問研より、32名が集まり、福島さくら保育園の見学と「福島県 保育・子育てのつどい」に参加してきました。29日は、大宮勇雄さんの基調講演や実技分科会・浜谷直人さんが講師をされた特別講座が行われていましたが、それと並行して保問研は独自にさくら保育園を訪ねました。前園長の斎藤美智子さんから、スライドを見せていただきながら、原発事故からの5年間の保育園の取り組みをお聞きしました。原発事故後、今までの日常が壊され、見えない放射線への緊張や不安の中で、子どもたちのためにどんなことがあっても、できることは何でもやる子どもたちを守る強い意志が痛いほどこちらに伝わってきました。安斎育郎研究所より貸出された、食品を刻まなくても放射線量を測れる食品線量測定器(食品の他、虫や木の実なども測定できる)や、園庭で設置されている線量計なども見せていただき、
参加者からは、「まだまだ高い数値に、事故が続いていることを実感した」、「落ち葉も自分で拾えない子どもたちの様子に、何気ない日常が奪われてしまったこと、その大切さを学んだ」などの感想も聞かれました。
宿泊先の飯坂温泉で夕食を囲んで行われた「つどいの交流会」にも参加しました。名物の福島県内ブロックごとの出し物は圧巻でした。それぞれの地域の出し物に独自の文化があり、いろいろな方法でつながりを確かめ合っているようにも感じました。
福島の方々と親交をあたため、30日は、9分科会に分かれて保育や子育てについて学び合いました。「いのちを育む食べ物」の分科会では、保問研の会員が質問すると、当時の状況を知らない福島の若い保育者や栄養士たちが真剣に報告者の話を聞いている様子に、私たちが参加した意味があったのかもしれません。
午後は「福島の子どもたちは、今」というテーマで、いわき・郡山・福島から保育現場の状況を聞き、これからを考えていくシンポジウムが行われました。斎藤美智子さんが、福島でも他の地域の状況を皆で一緒に聞くのは初めての機会だと、あとで話してくださいましたが、放射能の話に触れてはいけない、触れられないと、人々が分断されてしまった状況があったことを思うと、5年を経て「放射能について話ができるシンポジウム」ができたことが、凄いことだと感じました。安斎育郎氏がシンポジウムの中で「事態を侮らず、過度に恐れず、理性的に向き合う」と私たちを励ましながら、わかりやすく話してくださいました。原発事故は、全国どこでも起きる危険性があると思います。「災害に備える」ために、安斎育郎氏の被ばくを減らす方法を、多くの人に聞いてほしいと思いました。
「福島県保育・子育てのつどい」は二日間で県内外から延べ400名以上の参加があり活気にあふれていました。5年間、精一杯、前向きに取り組んでこられた福島の方々の、たくさんの思いを直に感じ、放射能の事実を学ぶことができ、また、災害時の保育のあり方を現地から学ぶことは大切なことだと改めて感じました。震災学習 福島ツアーの意義を改めて振り返り、今も続いている「子どもの命を守る」福島の取り組みに、これからも忘れないで心を寄せて学んでいきたいと思います。
震災学習部会 三浦和恵(仙台保問研)